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〈忘れ得ぬ旅 太陽の心で――池田先生の連載エッセーから〉 

ブラジル

2023年3月8日

 

負けない“勝利の女王”に

 

     水面に一輪、凛と開いた蓮華。

     手前にはオオオニバスの大きな円形の葉が浮かぶ

           (池田先生撮影。1993年3月、

               サンパウロ州イタペビ市で)

 

 月刊誌「パンプキン」誌上の池田先生の連載エッセー「忘れ得

ぬ旅 太陽の心で」を紹介する本企画。今回は「ブラジル――負

けない人が『勝利の女王』」〈2014年3月号〉を掲載する(潮出版社刊の同名のエッセー集から抜粋)。

 

      澄み切った青空のもと、

      爽やかな風に包まれて咲く色とりどりの花々

            (池田先生撮影。1993年3月、

                サンパウロ州イタペビ市で)

 

 世界各地から移民が集うブラジル。人々は互いの違いを乗り越

え、心と心の絆を紡ぐ、明るい“太陽の心”に満ちている。ブラジ

ルが夜にさしかかると、日本は日の出を迎える。さあ、“太陽の心”のバトンを受け継ぎ、新たな朝を朗らかに前進しよう!

 ブラジルの
  サンバのごとく
      賑やかに
     友に幸福
       踊り来たれよ
   
 「太陽」は、いつも、たえまなく回転する我らの地球のどこかを照らしています。同じように、「太陽の心」を持つ女性たち

は、いつも、地球のどこかの地域を照らしています。

日本の女性が曙の光を浴びて一日の活動を始める時、地球の反対側のブラジルの女性は夕焼けに包まれて一日を終えようとすると

ころです。

日本とブラジルの時差は十二時間。朝と夕、昼と夜が逆なのです。それぞれ北半球と南半球ですから、季節も日本が春の時にブラ

ジルは秋、夏の時には冬となります。

地球上で、今、この時に、まったく対照的なリズムで生活を営んでいる、はるかな友に思いを馳せると、心が豊かに広がります。

今日も新たな朝に、明るいブラジルの友人たちから「太陽の心」を受け継いで、楽しく勢いよくスタートしていきたいものです。

 

サンバのごとく!

 わが心
  翼となりて
   南米へ
  善き友の待つ
    天地を巡らむ
   
 ブラジルの友と語らうなかで、よく耳にする言葉は「エスペランサ(希望)」です。

今は、どんなに苦しくとも、絶対に負けない!

ここを耐え抜けば、いつかは必ず良くなる。

明日にはまた、新しい陽が昇る。

何があろうとも、前へ前へ!

──ブラジルの母たち、女性たちの微笑みにも、不屈の「希望」が光っています。

 

違いを乗り越えて

 〈美麗な海岸と山並みに包まれるリオデジャネイロの讃歌には、「すばらしい町、わがブラジルの心/人々の魂の中に生きる/サ

ンバと美しい歌の揺りかご/おまえはほがらかに歌う」と。池田先生は、この歌を通してつづった〉
   
 わが地域を「すばらしい町」と喜べる人生には美しい歌があります。

自分たちの努力で「すばらしい町」を築きゆく人生には朗らかな歌があります。

ブラジルは、日本をはじめ世界中から移民を受け入れ、互いの違いを乗り越えて、多様なルーツを持つ人々と文化がダイナミック

に融合する社会を築いてきました。ブラジルの天地で、音楽の名曲が次々と生み出されてきた、尽きることのない源泉も、ここに

あると指摘されています。

私の友人であるブラジルの大音楽家アマラウ・ビエイラ氏は、若き日から、ピアノの道で、真剣な努力を貫き通してこられまし

た。

そもそも、人は、なぜ音楽を求めるのか? 

ビエイラ氏は、生命自体に、周りの自然や人間とのハーモニー(調和)を求める善性が備わっているからと、洞察されていまし

た。 

「ピアノ」の語源は、発明当時(十八世紀)、他の鍵盤楽器よりも多くの音を出せたことから、「ピアノ・エ・フォルテ(弱い音

から強い音まで)」と呼ばれたことにあるといいます。

ピアノの八十八の鍵盤から、変幻自在に多彩な音が繰り出され、妙なる協奏の調べが織り成されていく──それと同様に、不協和

音が渦巻く現実社会でこそ、一人一人が生命の善性を解き放ち、結び合い、麗しいハーモニーを奏でていくべきではないでしょう

か。

 

希望の哲学の種

 〈さらに池田先生は、「生きる喜び」を広げる母たち、女性たちの励ましにこそ、人間の尊厳を輝かせる原動力があると述べ、

勇気の大切さを強調する〉
 
 私と妻がよく知る京都出身の女性は、二十代で夫と共にブラジルへと渡りました。

喘息を克服してきた体験を持つ彼女は、メモ用紙に書いた片言のポルトガル語を頼りに、三人の幼子を抱えながら、何十キロと離

れた友のもとへも激励に通いました。「変毒為薬(毒を変じて薬と為す)」という東洋の哲理を、力強く語り続けたのです。彼女

たちの真心の励ましによって、自他共の幸福のために行動する女性のスクラムが、ブラジル全土に躍動しています。

ある一人の母は、巨額の負債を抱えた夫の工場の倒産や、足の切断を迫られる自身の難病などの宿命に打ち勝って、一家の和楽を

築き、地域社会のために尽くし、幾百人の苦悩の友人を蘇生させてきました。彼女は、こう語っていました。

「幸せになるために、一番必要なのは勇気です! 大切なのは、友の心に希望の哲学の種を蒔くことです。そして、関わり続け、

励まし続けることです」と。
 
 〈世界屈指の広大な国土を誇るブラジルでは、アマゾンをはじめとする大自然の営みが広がっていることに触れて、池田先生は

友への期待を語る〉
 
 アマゾンの熱帯雨林には世界の生命種の三分の一が生息しているとされます。いのちといのちが無限の絆でつながり支え合う、

世界第一の“生命の宝庫”です。

「平和と自然と生命のための戦いを起こしていこう!」とは、私が交流を重ねてきたアマゾンの大詩人チアゴ・デ・メロ氏の叫び

です。わが友人たちは、かけがえのないアマゾンの環境の保全と、人々の啓発に奔走してきました。

アマゾンのオオオニバス(スイレンの一種)は、多くのいのちを包むように直径二メートルに及ぶ大きな葉を持ち、泥のなかから

清浄無比な花を咲かせます。このスイレンの別名は「勝利」という名の女王に由来します。私と妻にとって、スイレンにつけられ

た「勝利の女王」という名前は、「心と心」の絆を守り広げている、何があっても負けないブラジルの母たち、女性たちの称号と

思えてならないのです。
 
ブラジルの女性詩人コラ・コラリーナは、青年への指針として、「人生を愛すること」「戦いをあきらめないこと」「悲観的な言

葉や考えは排除すること」「人間の価値を信じること」「人間の連帯を信じること」などを呼びかけました。まさに「太陽の心」

と言ってよいでしょう。

私たちも、今日一日、この「太陽の心」を悔いなく輝かせ切って、そして、新しい一日をスタートするブラジルの友へ、元気いっ

ぱいに託していきたいと思うのです。
 
 (『忘れ得ぬ旅 太陽の心で』第4巻所収)

 

 ※リオデジャネイロの讃歌は、クラウス・シュライナー著、中村とうよう監修『ブラジル音楽の素晴らしい世界 民謡から現代

  サンバまで』井口靖・荻野蔵平・高橋慎也・恒川元行・中村純子・平高史也 共訳(ニューミュージック・マガジン社)。

 

 

 

 


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