〈永遠なれ「3・16」 広宣流布記念の日65周年〉
2023年3月8日
小説『新・人間革命』第25巻「福光」の章から
(内田健一郎画)
式典当日、戸田先生は、モーニング姿であったが、足元はスリッパ。
既に革靴が履けないほど、体は衰弱されていたのである。
それでも青年のもとへ!
最後まで青年と共に!
これが師の心であった。万代のために指揮を執られる大将軍の英姿であった。
私は、ただ戸田先生の体調だけが心痛であった。
先生に安心して動いていただけるよう、手作りの「車駕」の製作を進めた。
念頭にあったのは、あの三国志の「五丈原の戦い」で、病篤き大英雄・諸葛孔明が車に乗って指揮を執った故事である。
青年部の有志が、私の心を心として、全力で、立派に車駕を作り上げてくれた。
先生に御覧いただくと、厳しい叱責が飛んだ。
「大きすぎる。これでは、戦闘の役には立たぬ!」
冷ややかに笑うだけの先輩幹部もいた。
けれども、私には、先生のお心が痛いほど、わかった。
本当は涙が出るほど喜ばれていたのである。だが、それで褒めただけでは訓練にならない。あえて「こんな重いものを担ぐ青年が
かわいそうではないか。軽くて、どこへでも飛んでゆけるものが必要なんだ」と言われ、最後まで厳愛で将軍学を教えてくださっ
たのである。
私がお詫びして、「弟子が真心で作ったものです。どうか、お乗りください」と申し上げると、先生は、にっこり頷いて乗ってく
ださった。
式典後にも、「体が良くなったら、あの車駕に乗って全国を回りたいな」と、語られる先生であった。
◇ ◇ ◇
法華経には、地涌の菩薩の使命が説かれる。
「太陽と月の光明が諸々の闇を除くことができるように、この人<仏滅後に法華経をよく持つ人>は世間の中で行動して、衆生の
闇を滅することができる」
現代社会には、深い闇が覆っている。だからこそ、大聖人の「太陽の仏法」を実践する我らの出番なのだ。
後継の創価の師子王よ、走れ! 確信の祈り、勇気の行動、そして正義の声の力で、民衆を、人類を明々と照らし晴らしゆくの
だ!
(『随筆 幸福の大道』所収、「『三・一六』は永遠なり 後継の君よ 広布の誓願に生き抜け」)