〈11・18「創価学会創立の日」記念特集 桂冠詩人40周年㊥〉
2021年11月16日
国境・民族・言語を超えて「非暴力の世紀」をつくる力がここに
南アフリカの人権の闘士マンデラ氏と池田先生が固く握手。
会見では、正義への情熱が響き合った
(90年10月、旧・聖教新聞本社で)
「詩心」の現代的意義とは――桂冠詩人の池田先生は「国境を超え
て、民族を超えて、言語を超えて、『詩心』で分かち合える世界は、
宇宙大に広がる『精神の連帯』を築き上げる」と述べ、「平和と非暴
力の世紀」を実現するエネルギーこそ「詩心の復権」にあると訴えた。
11・18「創価学会創立の日」記念特集㊥では、古今東西の詩人や識者との詩心を通した交流の軌跡を紹介する。
池田先生は海外歴訪の激務の合間を縫って、不滅の傑作を残した詩人の”創造の源”に思いをはせてきた。
1981年6月1日、イタリア・フィレンツェにある詩聖ダンテの生家へ。
死後の世界の旅を通して、”いかに生きるべきか”を大胆な筆致で描き切った『新曲』で知られるダンテ。先生は、生家の外壁に飾られた
彼の胸像を見ながら、対話するように詩人の波乱の生涯を回想。付近の店舗の店員やフィレンツェの大学の学生らと、ダンテや詩を巡っ
て語り合った。
同月20日には、アメリカ・ニューヨーク州のロングアイランドに立つ民衆詩人ホイットマンの生家に足を運んだ。
詩集「草の葉」などで全ての人間の尊さを謳い上げたホイットマン。先生は直筆原稿のコピーや日記、肖像画などを丹念に見つめ、
ウォルト・ホイットマン生家協会の関係者とも語らいを。生家のノートに「我が青春の新鮮なる心を/いやがうえにも燃え上げた/ホイ
ットマン生誕の家に今来る/詩人とは 詩心とはを/今再び/自然の心に戻りて/思索の一時を送る」と記した。
先生はホイットマン没後100年に際し、92年3月に長編詩「昇りゆく太陽のように」を発表。ホイットマンの研究者から「互いに腕
を組み、共に信じるものを守りゆこうと、ホイットマンに語り掛けているかのよう」と賛辞が寄せられた。
このほか先生は、ゲーテの家などを訪問。そして、折あるごとに詩人の残した精神的遺産について語り、つづっている。
創価大学での特別文化講座「人間ゲーテを語る」(2003年3月)では、厳しい薫陶や苦難に負けずに”精神の王者”を目指した偉人ゲ
ーテのごとく、徹底して学び抜いてほしいとエールを。
08年4,5月には「大詩人ダンテを語る」と題する創価学園「特別文化講座」を本紙上で発表。卑劣な迫害に遭おうとも、人々の幸福
のために筆を振るったダンテの姿を紹介し、人生の勝利者にと望んだ。
国家指導者、各界の識者、文化人と公式なものだけでも1600回を超える語らいを重ねてきた池田先生。その中で友情を深めるきっか
けとなったのが、詩心の交流であった。
1991年4月、先生はソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフ氏と東京の迎賓館で会見した。ソ連の国家元首として初の訪日――これ
は、前年のモスクワでの出会いの際に交わした約束であった。先生は「私も一つ約束を果たさせていただきたい」と、長編詩「誇り高き
魂の詩」を献呈した。
「あなたのなした偉業は/人類の歴史に燦然と輝き/後世 永遠に/人間凱歌の不滅の光を放ちゆこう」
氏は応じた。
「『友人としての真心』の作品として、ありがたく受け取らせていただきます」
その後、両者は人類の未来を展望する対話を重ね、対談集も発刊。麗しき友情の交流は今も続いている。
90年10月、後に南アフリカ大統領となるネルソン・マンデラ氏を旧・聖教新聞本社で歓迎。先生はアパルトヘイト(人種隔離)と戦
い抜く氏の偉大な精神闘争をたたえ、長編詩「人道の旗 正義の道」を贈った。
氏は言った。
「私たちがきょう、ここで得た最大の”収穫”は、池田名誉会長の英知の言葉です。勲章は、いつか壊れてしまうかもしれない。賞状も、
いつか焼けてしまうかもしれない。なくしたり、盗まれてしまうかもしれない。しかし、英知の言葉は不変です。その意味で私たちは、
勲章や賞状以上の贈り物をいただきました」
このほか先生は、ドイツのリヒャルト。フォン・ヴぁいつ絶歌―大統領、フランスの美術史家ルネ・ユイグ氏、世界的な作家チンギス・
アイトマートフ氏、デンマークの桂冠詩人エスター・グレース氏らにも献詩。
87年4月、中国の周恩来総理の妻である鄧穎超氏に贈ったのが、夫妻との友諠を詠んだ「縁の桜」。この詩をもとにした曲「桜花の
縁」は友好の象徴として歌い継がれている。
ブラジルを代表する詩人チアゴ・デ・メロ氏とは、97年4月に旧・本社で懇談し、互いに詩を贈り合った。メロ氏が”池田会長の詩は私
を何十年ぶりかに感動させ、蘇生させました”と語れば、先生は”苦闘の中で生まれたメロ先生の詩は、机上の作文ではなく魂の叫び”とた
たえた。
世界に平和と希望の連帯を広げてきた詩心の交流の劇は、不滅の光彩を放っている。