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〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 多様性こそ力③

2018年11月8日

 

   他者の中で磨かれて見つけた自分の輝き

 

 

                             速水茂久さん

 

 現代社会の課題と向き合う「グローバルウオッチ 共生の未来へ」。

多様な人々が、自分の特性に気付き、生かしながら社会をより良くしていく――

そんな共生社会を築く上で、創価学会は、どんな役割を担えるのか。

自らの障がいと向き合い続ける日本とイギリスの青年部の体験を通して考える。

 

 今年8月、日本の中央省庁で“障がい者雇用水増し問題”が発覚した。

障害者雇用促進法は、行政機関や企業に一定割合で障がい者を雇うことを義務付

けている。これまで中央省庁は、約6900人の障がい者を雇用し、その雇用者

全体に対する割合は、法定雇用率2・3%を超える2・49%に上ると公表されていた。

だが、今回の問題が発覚後、厚生労働省が調査すると、半数を超える3460人が不正な算入だったことが分かっ

た。雇用率は1・19%と、法定雇用率を大幅に下回ることになった。その後、自治体でも同様のケースが次々と

判明するなど、大きな波紋が広がっている。

日本社会において、障がい者と健常者が共に、安心して働ける環境づくりが今、求められている。

 

励まし合い

 「一口に“障がい者”といっても、状況はさまざまです。そんな障がい者が抱える不自由さに、思いをはせていく

ことが、誰もがお互いを尊重して支え合う社会につながっていくんと違いますか」。こう語るのは、和歌山・岩出

市にあるクリニックに勤務する速水茂久さん(男子部副本部長、部長兼任)。鍼灸マッサージ師として、主に人工

透析を受ける身体障がい者を担当している。

速水さんも、目に障がいがある当事者の一人だ。

幼い頃から目が悪く、“瓶底めがね”を掛けていた。そんな外見を理由として、小学校では、周囲からいじめられた。

高校卒業直前の検査では、円錐角膜と網膜剝離との診断が下された。入社が内定していた会社に検査結果を伝える

と、たった一言、「いらんわ、そんな子」。入社が取り消しになった。

しばらく自暴自棄になった。

盲学校を経て、マッサージ師として働き始めたが、「人生の目的も目標も何もない。真剣に生きるのは、あほらし

いという気持ちでした」。

そんな速水さんに声を掛けた人がいた。学会の男子部員でもあった職場の先輩だった。「今はつらいと思うけど、

必ず努力が実を結ぶ日がくるから」

当初は、なかなか素直には聞き入れられなかった。

やがて、他者や環境に一喜一憂する生活に疲れ果て、ついには自殺を考えるようになる。そんな時、ふと頭に思い

浮かんだのが、励ましを送ってくれた職場の先輩だった。

“この苦しさを誰かに分かってほしい”――そんな思いで電話を掛けた。先輩は、黙って話を聞いてくれた。そして

「分かった。今すぐ行く」と、速水さんの自宅まで来てくれ、一緒に祈ってくれた。心がすっと軽くなった。

先輩たちは真剣な表情で速水さんに語り掛けた。「信心で絶対に変われる。この信心に懸けてみたらどうだ」

初めて人の温かさが心にしみわたった瞬間だった。“この人たちのように、人に希望を送れる人間になりた

い”――2010年、学会に入会した。

もちろん、信心したら簡単に全てがうまくいったわけではなかった。人間関係でつまずいたり、自身の不注意から

職場で迷惑を掛けたり。だが会合に行くと、同志が自分の話に耳を傾けてくれた。どんなに落ち込んでいても元気

になれた。

次第に、速水さんも、他の同志のさまざまな悩みを耳にするようになった。

あるメンバーは、いじめが原因で、精神的に追い詰められた経験があった。また、他のメンバーは、周囲から「障

がいのせいにしたらあかん」と言われ、苦しんでいた。

そうした話を聞くうちに、自分と全く同じ境遇の友がいることに気付いた。苦しさが痛いほど分かった。“障がいが

ある自分だから、励ませる人がいるのかもしれない”と思うようになった。誰よりも人の苦しみに寄り添える自分に

なりたいと、学会活動に全力で取り組んだ。

一緒に活動する、ある男子部員は言う。

「自分は自閉症です。速水さんは、その苦悩を一番分かってくれます。『困ってるんやったら話聞くで』『どうし

たん?』と、話を聞いてくれることが、自分の支えになっています」

そんな中、速水さんの職場での振る舞いも変わっていった。以前は、居場所を失いたくないと、波風を立てないよ

うに、何をするにも消極的だった。それが患者一人一人の立場や境遇に合わせ、きめ細かい対応を心掛けたり、職

場環境を改善したりできるようになっていった。

速水さんが障がいがあることにとらわれない自分になると、周囲もまた、速水さんを未知なる可能性にあふれた一

人の若者として見つめるようになった。「どんなに厳しい状況でもあきらめないのが、速水くんのいいところ」と

周囲からの信頼は厚い。

現在、推薦で公益社団法人「全国病院理学療法協会」和歌山県支部の支部長を務める。研究と後進育成に対する表

彰も受けた。また、来年2月に開催される近畿理学療法学会の学会長として、クリニックの取引企業から協賛や後

援を受けるなど、準備に全力で取り組む。

一昨年、速水さんの父親が、がんで倒れ、亡くなった。

生前、創価学会の活動を理解し、応援してくれていた。そんな父に、速水さんがマッサージを施すと、とても喜ん

でくれたという。速水さんにとって、マッサージ師になったことを心から誇りに思えた、忘れられない出来事だ。

「創価学会に出あったからこそ、自分という人間が、人を笑顔にできる存在になれたと思います」

 

成長の糧

 イギリスに住むダニー・アービングさん(男子部本部長)は10代後半の頃、母親が創価学会に入会した。母に

連れられ、学会活動に参加していた。

その後、アービングさんは大学生の時、南アフリカに行き、貧困のために教育を受けられない子どもたちと出会っ

たことをきっかけに、教員になるという夢を持った。

そんな矢先、大学の教職員の勧めで検査を受けると、自身の障がいが判明する。高次脳機能障がいの一つ、失行症

だった。

思い当たる節はあった。以前から、うまく文字が書けなかったり、意味の通らない文章を書いたりして指摘を受け

ていたからだ。

アービングさんは、すぐに、会合で何度も聞いた「変毒為薬の信心」という言葉を思い出した。“自分自身の人生

を変える機会かもしれない”――アービングさんはそう思い、2003年に自身も御本尊を受持した。

朝晩の勤行・唱題を欠かさずに実践したが、当初は、どうしても拭えない疑問があった。

“なぜ自分が障がい者として生きなければならないのか”という思いだ。

だが、母親や周囲の学会員は違った。「努力した分、必ず結果はついてくる」「自分の可能性を決め付けてはいけ

ない」

アービングさんは、そんな励ましを受けているうちに、自分は必要以上に自分の可能性を疑っているのではないか

と思うようになった。

「自分には障がいがあるという思いが先に立ち、自身を完全に信頼できていないことに気付いたのです」

それからアービングさんは猛勉強を重ねるようになった。06年には教員免許を取得。念願の学校教員になること

ができた。

その後も、職場からの解雇や右目の失明などの困難があった。それでも全てを乗り越えた。

現在はオンライン英会話教師として、貧困や障がいが原因で教育の機会に恵まれない世界の子どもたちを相手に、

貢献の場を広げている。

特に、アービングさんが得意とする、習熟度が異なる一人一人に合わせた教育方法には、子どもたちだけでなく、

同僚からも称賛の声が寄せられている。

「自分の見つめ方が変わったからこそ、自分の経験を生かし切れる今の仕事に出あうことができました。同志の皆

さんに、困難をも成長の機会とする生き方を教えていただき、心から感謝しています」

 

宝塔の林立

 かつて池田大作先生は、日蓮大聖人の大宣言「末法に入って法華経を持つ男女の・すがたより外には宝塔なきな

り」(御書1304ページ)に触れ、次のように綴った。

「いかなる出自も境遇も、老若男女の違いも、民族も人種も、貧富も階級も、その人が宝塔と輝く妨げにはならな

い。病気や障がいがあろうが、いかなる災難や宿命が襲おうが、幸福になることを邪魔されない。誰もがわが生命

の輝きをもって、今世の使命の道を進み、自他共の幸福の道を開くことができるのだ!」

「自他共の幸福の道」こそ、「共生社会の道」であろう。まず一人が立ち上がり、わが生命を宝塔のごとく輝かせ

る。その生命の輝きが周囲を目覚めさせ、一人また一人と立ち上がり、今いるその場を輝かせていく。誰も置き去

りにしない、誰もが輝いている、いわば「宝塔の林立」が共生社会の実像といえよう。学会の「一人立つ精神」は、

共生社会の扉を開く鍵である。

 

 

 

 

 

 

 


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