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〈グローバルウオッチ〉 共生の未来へ 多様性こそ力②

2018年10月20日

 

   人それぞれの物語。

   耳を傾け、友情結ぶ

 

 

            川北さんたちが働く豊橋市の造船所。

              自動車運搬船などを製造している

 

現代社会の課題と向き合う「グローバルウオッチ共生の未来へ」。

文化的背景の異なる人たちと生活する中で、多様性をいかに社会の

力と変えていけるのか。前回12日付に続き、愛知県豊橋市の学会

員の取り組みを取材した。

 

 本年6月に政府がまとめた経済財政運営の基本指針(骨太の方針)には、人手不足の深刻な5分野を対象に、即

戦力となる外国人材の在留資格を新設する方針が盛り込まれた。その分野の一つが「造船」である。

長年にわたって日本の造船業をリードする、愛知県豊橋市。熟練工が高齢化し、少子化により若手人材が不足する

近年は、海外からの働き手を多く受け入れてきた。

 

外国人材と共に

豊橋市臨海部の造船会社。敷地内には大小の工場建屋が並び、鋭い金属音が鳴り響く。

従業員は、大半が日系ブラジル人などの外国人。さらに約400人の技能実習生がフィリピン、中国から来ている。

実習生の受け入れの窓口となっているのは、30以上の協力会社が加盟する事業協同組合だ。

同組合理事長の川北謙二さん(豊橋総県、本部長)が、造船の道に進んだのは10代の頃。船造りは日本の“お家

芸”。

汗と油にまみれての労働は男の誇りだった。だが時代とともに、きついといわれる製造業で働く若者が激減した。

この造船会社でも、フィリピンからの実習生を受け入れるようになった。

作業は常に、命の危険と隣り合わせ。生活環境の違いもある中で、無事故の仕事を遂行するのは容易ではない。

彼らの受け入れ先となった企業の事業主には、細かな規則をいくつも定め、破ればすぐに怒鳴るような人もいた。

“逃げ出した場合の保険料”などと言って、負担を強いることも。

「日本人には、外国人を“働かせてあげている”という思いがあったのだと思います。この意識を改めることが大切

だと感じました」と川北さん。

これからの造船業は、彼らなくしては守れない。自分たちの誇りを受け継いでくれるのは彼らだ――。向き合い方

が変わると、外国人労働者への感謝の念が日々、強くなっていった。

川北さんは15年前、現在の協同組合を立ち上げ、理事長に就任。技能実習生の受け入れを一手に担うようになっ

た。

仕事意欲の低下や、無断での遅刻、欠勤……。外国人労働者を取り巻く課題は多かった。川北さんは、彼らが何に

困り、どんな支えを必要としているのかを理解しようと努めた。「日本人社員が同じ問題を起こせば、きっとそう

対応するはず。外国人だからといって、変わってはいけないですから」

一人一人と話すと、家族と離れて暮らす彼らの寂しさが、どれほど大きいかを感じた。日本の生活になじめるよう

にと、クリスマス会や旅行を企画した。寮にはワイファイ(無線通信)を整備し、故郷の家族とスマホで話せる環

境を整えた。

仕事では、クレーン操作や高所作業に関する資格の取得を義務付けた。安全標識を外国語で併記するなど、労働者

の安全確保に最善の注意を払った。

そうした行動の原点は、男子部時代。仕事に行き詰まり、環境のせいにしていた川北さんに先輩は言った。“仕事

は、男にとって人生そのものじゃないか。愚痴ばかり言っていないで、必死にやってみよう!”

その先輩は当時、不運に見舞われ仕事を失った直後だった。それでも負けずに学会活動に励みながら、渾身の励ま

しを送ってくれた。「先輩の優しさや厳しさは、どんな人に対しても変わりませんでした」

同じ思いで技能実習生に寄り添ってきた川北さん。これまで数百人が職場から巣立った。

「マタ、イッショニハタラキタイデス」

母国に帰った人の多くから、そんな連絡が入る。今では、かつての実習生のきょうだいや、子どもたちが働きに来

る。

 ◇

西部秀幸さん(支部長)は、協力会社の代表取締役。会社では、5人の技能実習生を含む約30人の外国人が働い

ている。

朝のミーティングや作業現場での指揮は日本語で行うが、内容によっては通訳を挟む。日系フィリピン人をはじめ、

日本語が堪能な従業員たちが、通訳を買って出てくれるのだ。

彼らは、文化の違いを理解する上でも、さまざまなアドバイスをくれる存在である。

西部さんは以前、作業でミスをした従業員にミーティングで注意を与えた。それを見た日系フィリピン人の同僚は、

「プライドの高いフィリピン人は、人前で怒られることを嫌がりますよ。にこにこしていますが、とても傷ついて

います」と。

自分がされて嫌なことは、相手にもしない。そんな当たり前の視点から、西部さんは外国人との“共生”に向き合っ

た。

ある時は、ビザの延長手続きが難航していた従業員のため、大阪の入国管理局まで付き添った。一人一人に尽くす

と、彼らは真剣に仕事に励み、応えてくれた。言葉は分からなくとも、心は通い合うと確信できた。

「職場でも、学会でも、私は素晴らしい人たちに恵まれてきました。今度は自分が、良き縁を広げていきたい。そ

う思って仕事に励んでいます」

 

まず信頼を示す

工場で溶接、塗装等の技術指導に立つ池町智人さん(地区部長)は、業務時間の大半を数十人の技能実習生たちと

過ごす。

かつてはパソコンを手に持って翻訳しながら、コミュニケーションを取っていた。自らもタガログ語を覚え、心通

わせる努力をした。今では、意思疎通の苦労は感じない。

池町さんは以前、食品会社に勤めていた。造船の仕事に就いた時、すでに数人の技能実習生がいた。池町さんの作

業に修正すべき点があれば、彼らが指摘してくれ、改善することができた。

「実習生たちが“先輩”として、知識と技術を教えてくれました。一緒に働けることに喜びを感じました」

やがて池町さんは、自らが責任者になっても、一人一人の長所を見つけ、それを伸ばしていくことを心掛けた。

ある時、作業の手が止まりがちな実習生がいた。理由を聞くと、“もっと良いやり方があると思う”と言った。

「では一度、そのやり方でやってみようか」。池町さんは受け入れ、従来のやり方との生産性を比較。どちらが良

いかを、共に話し合いながら決めていった。

「“こうやるんだよ”と指示し、従わせるのは簡単かもしれません。でも、こちらが信頼を示すことで、一人一人の

力が発揮されるんです」

池町さんは毎日、従業員全員に声を掛けるよう、心を配っている。ふと見せる表情の変化や行動から、生活の課題

や母国の家族の状況などで悩んでいることに気付き、話を聞く時もある。

池町さんのもとで働くジミー・チョルハンゴンさんは、フィリピン出身。実習生として2度目の来日である。

「日本人は、いい人たちばかり。冬は寒くて困ったけど(笑い)、寮では家族とも話ができるし、ここで働けて本

当に良かった」

フィリピンで家を建て、ビジネス用の土地も購入。夢をかなえることができたと、日本での経験に感謝する。

彼のように、働いて得たお金を計画的に使える人もいれば、浪費してしまう人もいるという。そんな話を聞き、

“ダメだぞ”と、時に小言を言う池町さんを、従業員は「ゴメンネ、イケマチサン」と笑顔で慕う。

 

一人の人として

川北さんが理事長を務める事業協同組合で長年、事務局長を務める黒川廣美さんは語る。

「縁あって日本に来てくれた技能実習生たちが、怪我なく働いて期間を満了し、母国に帰ってさらに活躍してもら

いたい。これが、私たちの願いです」

「私たちはとても家族的な組合であると自負していますし、そんな素晴らしい環境をつくってくれているのが、

川北さんをはじめとする皆さんです。外国人の力をお借りして、日本の造船業をもっと活性化させられるよう、

取り組んでまいります」

異なる文化や習慣との触れ合いは日常的になった。この国に来る人たちのそれぞれに、自分ならではの生き方があ

る。誰一人として同じ人間はいない。

池田大作先生は、他者を民族や宗教といった枠組みで一律に判断してしまうことは、「本来は限りなく豊かな一人

一人の人間の実像をゆがめる結果を招いてしまう」と述べている。そして、「一人一人の顔といった具体的な像を

もって心に立ち現れる『友情』のような、確固たる結びつき」こそ、人々を分断しようとする働きに対抗する力で

あると語った。

互いの人生の物語に耳を傾け、一人の人として友情を結んでいく。その一対一の結合を土台として、多様な力が発

揮される共生社会は築かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 


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