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〈世界広布の大道――小説「新・人間革命」に学ぶ〉 第1巻 名場面編

20181017

 

 今回の「世界広布の大道 小説『新・人間革命』に学ぶ」は第1巻の「名場面編」。励ましに彩られた感動の名

場面を紹介する。本連載は月4回、原則、水曜日に掲載。1カ月で1巻分を紹介する。次回の「御書編」は24日

付、「解説編」は31日付の予定。(「基礎資料編」は10日付に掲載)

 

 

皆の幸せのために

 ヒロト・ヒラタは、瞳を輝かせ、真剣に耳を傾けていた。伸一

は、確かな手応えを感じながら、幹部としての信心の姿勢を話し

ていった。

海には、丸い月がほの白い影を映し、浜辺には、波の音が静かに

響いていた。

「これからの人生は、地区部長として、私とともに、みんなの幸

せのために生きてください。

社会の人は、自分や家族の幸せを考えて生きるだけで精いっぱい

です。そのなかで、自ら多くの悩みを抱えながら、友のため、法のため、広布のために生きることは、確かに大変

なことといえます。

しかし、実は、みんなのために悩み、祈り、戦っていること自体が、すでに自分の境涯を乗り越え、偉大なる人間

革命の突破口を開いている証拠なんです。

また、組織というのは、中心者の一念で、どのようにも変わっていきます。常にみんなのために戦うリーダーには、

人は付いてきます。しかし、目的が自分の名聞名利であれば、いつか人々はその本質を見抜き、付いてこなくなり

ます」

ヒラタには、乾いた砂が水を吸い込むような、純粋な求道の息吹があった。伸一は、彼の手を握りながら言った。

「あなたを地区部長に任命したのは私です。あなたが敗れれば、私が敗れたことです。力の限り、存分に戦ってく

ださい」

「はい! 戦います!」

ヒラタは伸一の手を固く握り返した。月明かりの中で二人の目と目が光った。

(「旭日」の章、76~77ページ)

 

 

異体同心の団結で

 市街を抜け、サンフランシスコ湾を右手に見ながら進んでいく

と、行く手にゴールデン・ゲート・ブリッジ(金門橋)の赤い鉄

柱が見えた。それは、近づくにつれて、頭上にのしかかってくる

かのようにそびえ立っていた。

一行は、橋の近くの広場で車を降り、休憩することにした。

広場には、橋を吊り上げているケーブルの一部が展示されていた。

その直径は92.4センチメートルで、2万7,572本のワイ

ヤを束ねて作ったものだという。

一行は、展示されたケーブルを、取り囲むようにして立った。

「ケーブルは太いけれど、中の一本一本のワイヤは意外に細いものなのね。これで、よくあの橋を吊り上げること

ができるわね」

清原かつが、驚きの声をあげた。

伸一は清原の言葉に頷きながら、前日、地区部長と地区担当員に任命になったユキ子・ギルモアとチヨコ・テーラ

ーに向かって語り始めた。

「確かに、一本一本は決して太いものではない。しかし、それが、束ねられると、大変に大きな力を発揮する。こ

れは異体同心の団結の姿だよ。

学会も、一人ひとりは小さな力であっても、力を合わせ、結束していけば、考えられないような大きな力を出せる。

団結は力なんだ。これからは、あなたたちが中心になって、みんなで力を合わせ、サンフランシスコの人びとの幸

せと広布を支えていくことです」

「はい!」

二人が同時に答えた。彼女たちは、自分たちが途方もなく大きな、崇高な使命を担っていることを強く感じ、身の

引き締まる思いがした。

(「新世界」の章、134~135ページ)

 

 

会長就任「五月三日」の夜

 伸一は、第三代会長として、一閻浮提広布への旅立ちをした、

この年(一九六〇年=編集部注)の五月三日の夜、妻の峯子と語

り合ったことを思い出した。

――その日、夜更けて自宅に帰ると峯子は食事のしたくをして待

っていた。普段と変わらぬ質素な食卓であった。

「今日は、会長就任のお祝いのお赤飯かと思ったら、いつもと同

じだね」

伸一が言うと、峯子は笑みを浮かべながらも、キッパリとした口

調で語った。

「今日から、わが家には主人はいなくなったと思っています。今日は山本家のお葬式ですから、お赤飯は炊いてお

りません」

「確かにそうだね……」

伸一も微笑んだ。妻の健気な言葉を聞き、彼は一瞬、不憫に思ったが、その気概が嬉しかった。それが、どれほど

彼を勇気づけたか計り知れない。

これからは子どもたちと遊んでやることも、一家の団欒も、ほとんどないにちがいない。妻にとっては、たまらな

く寂しいことであるはずだ。だが、峯子は、決然として、広宣流布に生涯をささげた会長・山本伸一の妻としての

決意を披瀝して見せたのである。

伸一は、人並みの幸福など欲しなかった。ある意味で広布の犠牲となることを喜んで選んだのである。今、妻もま

た、同じ思いでいることを知って、ありがたかった。

(「錦秋」の章、156~158ページ)

 

 

師弟貫く不屈の闘魂

 伸一は、背広のポケットにしまった恩師・戸田城聖の写真を取

り出すと、ベッドで体を休めながら、その写真をじっと見つめた。

彼の頭には、戸田の逝去の五カ月前の十一月十九日のことが、ま

ざまざと蘇った。それは恩師が病に倒れる前日であった。伸一は

その日、広島に赴こうとする戸田を、叱責を覚悟で止めようとし

た。

恩師の衰弱は極限に達して、体はめっきりとやつれていた。更に

無理を重ねれば、命にかかわることは明らかだった。

学会本部の応接室のソファに横になっている戸田に向かい、彼は床に座って頭を下げた。

「先生、広島行きは、この際、中止なさってください。お願いいたします。どうか、しばらくの間、ご休養なさっ

てください」

彼は必至で懇願した。しかし、戸田は毅然としていった。

「そんなことができるものか。……そうじゃないか。仏のお使いとして、一度決めたことがやめられるか。俺は死

んでも行くぞ。

伸一、それが真の信心ではないか。何を勘違いしているのだ!」

その烈々たる師の声は、今も彼の耳に響いていた。”あの叫びこそ、戸田先生が身をもって私に教えてくれた、広

宣流布の大指導者の生き方であった”

ブラジルは、日本とちょうど地球の反対にあり、最も遠く離れた国である。そこで、多くの同志が待っていること

を考えると、伸一は、何としても行かねばならないと思った。そして、皆を励まし、命ある限り戦おうと心を定め

た。胸中には、戸田の弟子としての闘魂が燃え盛っていた。

(「慈光」の章、265~266ページ)

 

 

肉体が限界を超えても

 打ち合わせが終わったのは深夜だった。伸一の肉体の疲れは既

に限界を超え、目まいさえ覚えた。

しかし、バッグから便箋を取り出すと、机に向かい、ペンを走ら

せた。日本の同志への激励の便りであった。手紙は何通にも及ん

だ。

彼は憔悴の極みにあったが、心には、恩師・戸田城聖に代わって

ブラジルの大地を踏み、広布の開拓のクワを振るう喜びが脈動し

ていた。

その歓喜と闘魂が、広宣流布を呼びかける、熱情の叫びとなってあふれ、ペンは便箋の上を走った。

ある支部長には、こうつづっている。

「今、私の心は、我が身を捨てても、戸田先生の遺志を受け継ぎ、広布の総仕上げをなそうとの思いでいっぱい

です。そのために大事なのは人です、大人材です。どうか、大兄も、私とともに、最後まで勇敢に、使命の道を歩

まれんことを切望いたします。

そして、なにとぞ、私に代わって支部の全同士を心から愛し、幸福に導きゆかれんことを願うものです」

日本の同志は、この時、伸一が、いかなる状況の中で手紙を記していたかを、知る由もなかった。しかし、後日、

これを知った友は、感涙にむせび、拳を震わせ、共戦の誓いを新たにするのであった。人間の心を打つものは、誠

実なる行動以外にない。

(「開拓者」の章、290~291ページ)

 

 

 

 

 

 

 

 


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