2018年1月31日
大きく裾野を広げる富士山
白雪を冠した富士山。
日本一を誇る高さに加え、その10倍にもなる裾野の広がりが、
一層の雄大さを感じさせる。
その“広がり”の中にある、静岡県裾野市。今回は、日本一の名峰の麓で
“励ましの裾野”を広げる友を取材した。
◇
「こんにちは! 林です」。地区部長を務める林修次さんがインターホン越しに
あいさつすると、家族に呼ばれた壮年が玄関先に現れた。
「お元気ですか?」。林さんはそう言いながら、カバンから1枚の案内状を取り出し、壮年に手渡す。「来月、支
部総会を開催します。もしよろしかったらご家族の皆さんとぜひ」
続いて「これ、先月に撮ったんですよ」と1枚の写真を見せる。富士の山頂をかさのように覆う「笠雲」を撮影し
たものだ。「聖教新聞の配達を終えた時、ちょうど見えたんです。珍しいでしょ」と。すると壮年も「いや、素晴
らしいですね。実は私も富士山の写真が好きで、毎年、年賀状にしているんですよ」と、目尻を下げた。
この日、林さんは2時間ほどで地区内の壮年宅を十数軒訪問。中には、あいさつ程度の所もあった。「あまり長く
話をされたくないという人もいますよね。私自身も少し前までは、そうでした」
林さんは、妻・由香さん(婦人部本部長)の勧めで1997年に入会。当初は男子部の先輩に引っ張られて学会活
動をしていたが、仕事が忙しくなり、20年近く、学会の活動から離れたという。
千福が丘地区の婦人部がにぎやかに
林さんは入会前から、仕事のストレスによる睡眠障害に悩まされ
ていた。薬を服用しても、熟睡できるのは1時間程度。次第に、
心に余裕がなくなっていった。
「だんだん、人と目を合わすことができなくなり、会話もしなく
なりました。ひどい時は、仕事以外で外出することもつらかった」
学会活動に復帰したきっかけは、2年ほど前、妻から地区総会の記録係を頼まれたことだった。カメラのファイン
ダー越に見る学会員の笑顔がまぶしく見えた。出来上がった写真を眺め、”自分もこの人たちのようになれたら”と
思った。
それから、少しずつ会合に参加するように。壮年部の先輩と、メンバーの訪問激励に歩くようになると、”時間革
命”に挑戦。午前5時に起き、勤行・唱題をして始業の2時間前に出社。定時に退社し、夜は学会活動の時間に充
てる。苦手だった会話が苦にならなくなり、自然に笑みがこぼれるようになった。
「これまで『忙しい』ことを言い訳に学会活動を避けていましたが、活動する理由を見失っていただけだったん
だと思います」
徐々に体調が良くなってきた林さんは昨年、二十数年飲み続けた睡眠薬を絶った。今は、ぐっすり眠れるうれしさ
をかみ締めている。
「20年以上の悩みが解消したんです。だから私も、信心の活動に消極的な方が”頑張ってみようかな”と思った時、
その瞬間を逃さず応援できる自分でありたい。
*
愛鷹山の近く、丘の上にある住宅街で訪問激励に励むのは、石井スミ子さん(支部副婦人部長)。軽快なトークと
愛嬌ある笑顔。だが、石井さんは右半身をほとんど動かせない。23年前に脳出血で倒れてから、まひがある。
「『もう一度、学会活動をしたい』と思えるまでに3年かかりました」
その間、地区の同志が何度も励ましてくれた。婦人部の先輩が「絶対、大丈夫だからね」と語りながら、まひした
右腕をさすり続けてくれたことは忘れられない。
現在は、つえを突きながら坂道や階段も難なく越えていく。左の手足だけで運転できるよう改造された車に乗り、
どこにでも行く。そうした石井さんの姿を見て、訪問先の人が、病気やけがの悩みを打ち明けることも多いという。
同じ地区に住む熊倉麻香さん(白ゆり長)も昨年、子どもたちの病気で悩んだことがあった。「石井さんは、私が
落ち込んでいると、いつも訪ねてくれる。『絶対、大丈夫。必ず乗り越えられるからね』って。石井さんに励まさ
れると、不思議と心が軽くなるんです」。子どもたちが元気に回復した熊倉さんは「これから私が皆さんを励ませ
るように頑張ります」と決意する。
*
励ましを広げる先輩たちの姿に、青年部も信心を学んでいる。
牙城会大学校生のAさんとBさんは、互いに切磋琢磨しながら信心と仕事に励む。
見さんは、サッカーのクラブチームで指導者をしている。昨年、選手の一人が練習中に他の選手と激しく接触し、
脳振とうと診断され、最悪の場合、サッカーができなくなると医師から伝えられた。男子部の先輩から「不可能を
可能にする信心だよ。今こそ真剣に祈ろう」と激励されたAさんは、必死に祈念した。
学校側にも状況を伝えて配慮をお願いし、練習中もその選手が心細くならないよう常に声を掛けた。「題目をあげ
ると”選手のためにできることは何でもしよう!”という気持ちが湧いてきます」
練習復帰まで最低でも半年以上かかると言われていたが、けがから約5ケ月後の精密検査の結果、すぐに練習を再
開しても問題ないと、太鼓判を押してもらった。
信心の核心を得たAさんは弟と対話。弟は昨年、御本尊を受持した。
Bさんは、市内にあるサファリパークでファーストフード店を経営する。昨年は夫婦で折伏を実らせた。
「これまでは日々の売り上げに一喜一憂していましたが、信心に励む中、どんな結果も前向きに捉えられるように
なりました」
職場では、自分から声を掛けるように心掛ける。パークのスタッフからの信頼も厚く、よく相談を持ち掛けられる
ことも多い。
*
若々しく地域を駆け巡る滝初枝さん(支部副婦人部長)は、友達づくりの名人だ。知り合った縁を大切に、毎日誰
かに声を掛けては世間話に花を咲かせる。困っている人がいれば、すぐに駆け付けて励ます。
「いつも人のために飛び回っているねと言われます。そういう友達には、御書の『人のために灯をともしてあげれ
ば、自分の前も明るくなる』(1598ページ、通解)を教えてあげるの。最近、信心を始めた友達が『これまで
は悩みのないのが悩みだと思っていたけど、それだと薄っぺらな人生よね』って言うのよ」
花が大好きだという滝さんの自宅には、200鉢以上のランがある。昔、近所の人にもらった一鉢から、年々、株
分けして増やしたものだ。
「ランは寒さに弱いんです。冬場は、冷気にさらさないよう朝晩はビニールをかぶせ、日中はビニールを上げて温
度や湿度を調整します。手間暇掛けてこそ、美しい花が咲きます。人も同じですね。笑顔になるまで、何度でも励
ましが必要です。私は、人も花も大好きですから、全く苦にならないんですよ」
”笑顔の花”が咲くまで――。きょうも滝さんは楽しそうに友のもとへ向かう。
◇
市内から眺める富士山は、なだらかな曲線を描き、かなたまで伸びている。
どの一人にも励ましを届けながら、全員が、それぞれの栄光の最高峰へ――裾野市の同志は今、そう決意する。