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勝ち鬨 四十一

 山本伸一は、翌十一日も朝から大分平和会館を訪ねてくる同志に声をかけ、一緒に記念

のカメラに納まり、激励に余念がなかった。

また、九日に再会した大分百七十人会や、前日に結成された大分男子・女子二十一世紀会

の前途を祝し、次々と記念の揮毫を認めていった。

「ほかに、まだ書き贈るべき人はいないのかい。宗門の事件で苦しみながら、頑張り抜い

てきた方は、まだまだいるだろう」

そして、県の幹部らから、奮闘した同志の名前を聞くと、直ちに硯に向かい、その人の名

を冠した「○○桜」「○○山」など、一枚、また一枚と色紙に筆を走らせた。

午後には、大分市内の個人会館を訪れ、県の代表と懇談した。この席で、制作中の大分県

歌について相談を受け、歌詞に手を入れ、曲についてもアドバイスした。

夜には、大分平和会館で自由勤行会が行われた。ここでも、伸一は、自ら勤行の導師を務

めるとともに、全力で参加者の激励、指導にあたった。

彼は、大分ゆかりの人のなかに、多くの歴史的人物がいることに触れた。

「大友宗麟は、キリスト教に帰依し、西洋文明の文物を残した。江戸後期の儒学者・広瀬

淡窓は、学塾『咸宜園』を開き、たくさんの弟子を残した。滝廉太郎は名曲を残し、福沢

諭吉は大学を残した。

では今、私たちは、信仰者として何を残すべきか。それは、日蓮大聖人が顕された生命の

大法である南無妙法蓮華経を全世界に流布し、永遠に伝え残していくことです。

各人が、万人の絶対的幸福への道を開く妙法を、わが人生において、幾人の人に教えるこ

とができたか――そこに、私どもの、この世で果たすべき使命があります。

この一点のみが、御本仏・日蓮大聖人の御賞讃をいただき、自身の永遠にわたる思い出と、

仏法者としての最高の功績と栄誉をつくる方途であります。この確信に立つなかに、信仰

者の真髄があることを知ってください」

 

 

勝ち鬨 四十二

 山本伸一は、皆の幸せを願いつつ語った。

「私は、自分が非難の嵐にさらされても、なんとも思いません。もとより覚悟のうえの

ことです。私の願いは、ただ皆さんが、御本尊の大功徳に浴しながら、ご多幸の人生を

歩んでいただくことであり、それが、私にとって、何よりの喜びなのであります。また、

そうなっていただいてこそ、私が責任を果たせた証左といえます。

お一人たりとも、病気になったり、事故に遭ったりすることのないように、懸命に祈っ

てまいります」

彼の、率直な思いであった。ほのぼのとした心の交流が図られた勤行会となった。

いよいよ明日は、大分から熊本へ向かう日である。この夜、伸一は、大分の首脳幹部ら

に言った。

「なんとしても、明日は竹田に行きたい。熊本に行く前に、竹田の皆さんとお目にかか

りたいんだ。最も苦しみ、悔し涙を流してこられた同志だもの……」

翌十二日朝も、伸一は、九州や大分の幹部たちと、これからの地域広布を展望しながら、

懇談を重ねた。そして、さまざまな報告を聴くと、自分の真情を漏らした。

「今まで苦しんできた同志のことを考えると、私は、それこそ一軒一軒、皆のお宅を訪

ね、励まして歩きたい気持ちです。

しかし、日程的にも、それは難しい。そこで、今回、お会いできなかった人たちを、私

の代わりに激励してください。私の心を伝えてもらいたいんです。

ともかく、広宣流布のために戦ってきた、尊き仏子である会員一人ひとりを大切にし、

守り抜いていくことです。それが、幹部の大切な使命だと思ってほしい」

大分平和会館には、伸一に一目会いたいと、大勢の会員が集まってきた。彼は共に勤行

し、午前十時、学会本部のバスで竹田に向かった。移動にバスを使うことになったのは、

車中、打ち合わせや執務を行えるからである。

広宣流布は、時間との戦いである。

 

 

勝ち鬨 四十三

 竹田市は大分県の南西部にあり、かつては岡城の城下町として栄えてきた。

バスに山本伸一と同乗した県書記長の山岡武夫が、岡城について語っていった。

――この城は、源氏方につき、平氏追討で戦功をあげた緒方三郎惟栄が、源頼朝と不仲に

なった弟の義経を迎え入れるため、文治元年(一一八五年)に築いたといわれる。

周囲を山々に囲まれ、南に白滝川、北に稲葉川が流れ、深い渓谷が刻まれた台地は、その

まま自然の要塞となり、難攻不落の城であった。しかし、ここに義経を迎えることはかな

わず、その後、惟栄は捕らえられ、流罪されている。義経への思いは、実を結ぶことなく

終わったのである。

城は、十四世紀に志賀氏の居城となる。天正十四年(一五八六年)から翌年にかけての豊

薩戦争では、島津の大軍が岡城を攻めた時、周囲の城が次々と落ちていくなか、青年城主・

志賀親次が奮戦し、城を守り抜いたと伝えられている。

岡城は、明治の廃藩置県にともなって取り壊され、城館は失うが、苔むした堅固な石垣が

往時を偲ばせているという。

また、少年時代を竹田で過ごした作曲家の滝廉太郎は、岡城址に思いを馳せつつ、あの名

曲「荒城の月」を作曲したといわれる。城址の二の丸跡には滝廉太郎の銅像が、本丸跡に

は作詞者・土井晩翠の筆による「荒城の月」の詩碑が建てられているとのことであった。

伸一は、感慨深そうに語った。

「岡城の築城は、緒方惟栄の、義経に対する忠節の証でもあったのか。美しい話だ。

志賀親次の奮闘は、竹田の同志の、さっそうたる戦いの勇姿と重なるね」

バスの車窓に、木々の間にそびえる、岡城址の石垣が見え始めた。

伸一は、歌を詠んだ。

 「荒城の 月の岡城 眺めつつ

    竹田の同志の 法戦讃えむ」

竹田の勇将は、衣の権威の横暴に敢然と戦い、民衆のための宗教の時代を開いたのだ。

 

 

勝ち鬨 四十四

 バスは、岡城址の駐車場に到着した。

山本伸一がバスを降りると、「先生!」と叫んで、何人もの同志が駆け寄って来た。

「ありがとう! 民衆の大英雄の皆さんにお会いしに来ました!」

彼が差し出した手を、皆、ぎゅっと握り締めた。伸一の手にも力がこもる。屈強な壮年

の目にも、見る見る涙があふれた。男泣きする、その姿は、邪智の悪僧の非道な仕打ち

に耐えに耐えて、戦い勝った無上の喜びの表現であった。

伸一は、駐車場にあるレストランで、地元の代表五十人ほどと、昼食をとりながら懇談

し、皆の報告に耳を傾けた。

城の本丸跡に、地元のメンバーが集まって来ているという。

「よし、皆さんに、お目にかかろう!」

地元幹部の代表二人と乗用車に乗り、同志の激励に向かった。

車中、彼らは、伸一に語り始めた。

「私たちは、護法のために尽くそうと、住職を全力で応援してきました。最初は、僧俗

合を口にしながら、手のひらを返すように学会を批判し、攻撃するようになりました。

そして、陰で同志に、学会を辞めるようにそそのかしていたんです……」

ある大ブロック(後の地区)では、四十五世帯の学会員のうち、一挙に三十二世帯が去っ

ていった。断腸の思いであった。悔しさを堪えながら、“もう、これ以上、創価の正義の陣

列から離れていく同志を、絶対に出すまい!”と、山間の地に点在する学会員の家々を訪ね

ては、懸命に励ました。

隣に乗った年配の壮年が、「人間のやることじゃありません……」と唇を嚙み締めた。

伸一は頷き、笑顔を向けた。

「お父さんには、ずいぶん苦労をかけてしまいましたね。よくぞ持ちこたえ、見事に竹田

を再起させてくれました。ありがとう!」

頭を下げた。壮年のすすり泣きが漏れた。

冬の試練が厳しければ厳しいほど、春を迎えた喜びは大きい。「労苦即歓喜」となる。

 

 

勝ち鬨 四十五

岡城址の本丸跡には、メンバーが続々と詰めかけていた。背広姿で、さっそうと石段を

上る壮年。お年寄りを背負い、元気に歩みを運ぶ青年。急ぎ足で、額に汗をにじませて進

む婦人……。交わす笑顔も明るい。

山本伸一は、途中で車を降り、二の丸跡へと上り始めると、十数人の男子部員が待ってい

た。悪僧の陰謀のなかで、同志を守り抜くために戦った丈夫たちである。伸一は一人ひと

りと固く握手し、励ましの言葉をかけた。

本丸跡に到着すると、三百人ほどの人たちが集まっていた。伸一が姿を現すや、歓声があ

がり、大拍手がこだました。

「皆さんに、お会いしに来ました。尊い、宝の同志と共に、二十一世紀へ出発するために

まいりました。では、一緒に記念撮影をしましょう。竹田の皆さんの、広宣流布の歴史に

残る大勝利を記念しての写真です」

集ってきた人たちのなかには、何人かの子どもたちの姿もあった。最前列には、祖母に抱

きかかえられた二歳ぐらいの男の子もいた。“民衆凱歌の魂の絵巻ともいうべき、この光景

は、幼い心にも、永遠に刻まれるにちがいない”と、伸一は思った。

「聖教新聞」のカメラマンが、ファインダーをのぞいた。メンバーが多すぎて収まりきら

ない。やむなく、もう一人のカメラマンの肩に乗って、撮影が行われた。

悪戦苦闘の暗雲を突き抜けた同志の顔は、晴れやかであった。皆の頭上にも、心にも、青

空が広がっていた。シャッターが切られた。

伸一は言った。

「せっかく岡城址に来たのだから、みんなで一緒に『荒城の月』を歌いましょう!」

県書記長・山岡武夫の指揮で、大合唱が始まった。伸一も声を限りに歌った。
  
 〽春高楼の花の宴

  めぐる盃 影さして……
  
 同志の胸に、感激の波が幾重にも押し寄せる。信心ある限り、必ず勝利の太陽は昇る。

 

 

 

 

 

 

 

 


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