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暁鐘 四十六

フランス上院の議場を見学した山本伸一は、公邸で、ポエール議長と会談した。議長は

創価学会に強い関心をもち、かねてから親しく話し合えることを願っていたという。  

また、人間尊重と平和への理念のもと、今回、伸一が、ソ連、ブルガリアなど、社会体制

の異なる国々を訪問して要人とも会見し、平和・文化交流を重ねていることに対して、共

感しているとの感想を語った。  

平和のためには、異なる体制、異なる文化の国々との交流が大切になる。しかし、多くの

人は、その交流を避けようとする。それだけに、彼の行動に議長は着目していたのだ。  

伸一は、自らの平和への信念について簡潔に訴えた。 「売名のため、あるいは観念で、

平和や生命の尊重を語る人もいるかもしれない。しかし、平和を切実に願う人びとや、純

粋な青年たちは、鋭く見ています。  

大切なのは、実際に何をしたかという、事実のうえでの行動です。私は、その信念で動い

ています。そうでなくては、次代を担う青年たちに、平和への真実の波動をもたらすこと

などできません。私は真剣なんです。  

創価学会は、戦時中、軍部政府の激しい弾圧を受けました。それによって、牧口初代会長

は獄死し、戸田第二代会長をはじめ、多くの幹部が投獄されています。また、私個人とし

ても、戦争で兄を失い、戦禍の悲惨さも身に染みています。  

だからこそ私は、戦争のない世界を創らねばならないと、生命の尊厳の法理である仏法を

信奉し、その平和主義を実現するために、行動しております」  

語らいは弾んだ。議長は、自身のレジスタンス運動の体験を語っていった。  

話題は、フランス大統領を務めたド・ゴールなどの人物論から、人間の生き方に及び、

三時間にわたって意見交換がなされた。

「人間は、自分より不幸な人を助けなければならない」――それが議長の信念である。

平和への共鳴音が、また広がっていった。

 

 

暁鐘 四十七

 山本伸一は、パリにあっても、要人や識者と対話を重ねる一方で、メンバーの激励に全

力を尽くした。

パリに到着した翌日の十一日には、フランスの青年メンバーとの信心懇談会に臨み、十二

日にはパリ会館を訪問し、勤行会に集った人たちを激励。さらに、懇談会を行っている。

十三日は、パリ会館での友好文化祭、フランス広布二十周年記念の銘板除幕式、記念勤行

会へ。十四日は、フランス最高協議会などに出席した。

また、パリ滞在中も、多くのメンバーと記念撮影を行い、家庭訪問にも足を運んだ。

二十一世紀の大飛躍のために、今こそ、青年を中心に、信心の基本を、創価の精神を、

一人ひとりに伝えていかねばならないと決意していたのである。

十四日午前、伸一は、宿舎のホテルから、ルーブル美術館に隣接するチュイルリー公園沿

いの通りを歩いていた。地下鉄と電車を乗り継いで、ソー市のパリ会館へ行くためである。

前日も電車を利用していた。日ごろ皆が、どんな状況で活動に励んでいるかを、知ってお

きたかったのである。

地下鉄のチュイルリー駅の階段を下り、構内に入った時、彼は同行の幹部に言った。

「今日は、パリ会館では、青年部の第一回代表者大会が行われることになっていたね。

青年たちの新しい出発のために、詩を贈ろう。言うからメモしてくれないか」

わずかな時間であっても、広宣流布のために、有効に使いたかったのである。

ホームで口述が始まった。

「今 君達は

 万年への広宣流布という

 崇高にして偉大な運動の

 先駆として立った

 正義の旗 自由の旗

 生命の旗を高く掲げて立った

 二十一世紀は 君達の世界である

 二十一世紀は 君達の舞台である」

 

 

暁鐘 四十八

地下鉄の中でも、山本伸一の口述は続いた。  

同行のメンバーは、懸命にメモ帳にペンを走らせる。  

チュイルリー駅から三つ目のシャトレ駅で、郊外に向かうB線に乗り換える。“動く歩道”

でも、電車を待つ間も口述を重ねた。  

「今 社会は   

 夕陽の落ちゆくごとく   

 カオスの時代に入った   

 故に我らは今   

 新しき太陽の昇りゆくごとく   

 平和と文化の   

 新生の歌と曲を奏でゆくのだ   

 多くの新鮮な   

 友と友の輪を広げながら   

 老いたる人も 悩める人も   

 求める人も 悲しみ沈む人も   

 すべての人の心に光を当てながら   

 すべての人の喜びを蘇生させながら   

 我らは絶えまなく   

 前進しゆくのだ」  

彼の瞼に、新世紀の広布に生きる、凜々しき青年たちの雄姿が浮かんだ。  

「新しき世界は    

 君達の   

 右手に慈悲 左手に哲理を持ち   

 白馬に乗りゆく姿を   

 強く待っている」  

電車を乗り換えてほどなく、伸一の口述は終わった。実質、十分ほどであった。  

同行のメンバーが、走り書きしたメモを急いで清書する。彼は、それを見ながら、推敲し

ペンで直しを入れていく。  

その時、「センセイ!」という声がした。  

三人のフランス人の青年男女が立っていた。数百キロ離れたブルターニュ地方から、パリ

会館へ向かうところだという。  

「ご苦労様。遠くから来たんだね。長旅で疲れていないかい?」  

青年を大切にしたいという思いが、気遣いの言葉となった。  

青年こそ希望であり、社会の宝である。

 

 

暁鐘 四十九

 三人の青年たちのうち、一人の女子部員が口を開いた。

「私は一年前に信心を始めました。私の住む町では、信心をしているのは私だけです。

座談会の会場にいくにも数時間かかります。こんな状況のなかでも、地域に仏法理解の

輪を広げていくことはできるのでしょうか」

すかさず、山本伸一は答えた。

「心配ありません。あなたがいるではありませんか。すべては一人から始まるんです。

あなた自身が、その地域で、皆から慕われる存在になっていくことです。一本の大樹が

あれば、猛暑の日には涼を求めて、雨の日には雨宿りをしようと、人びとが集まってき

ます。仏法を持ったあなたが、大樹のように、皆から慕われ、信頼されていくことが、

そのまま仏法への共感となり、弘教へとつながっていきます。自身を大樹に育ててくだ

さい。地域の立派な大樹になってください」

電車がパリ会館のあるソー駅に着くころには、詩はすべて完成した。題名は「我が愛す

る妙法のフランスの青年諸君に贈る」とした。

一行が会館に到着すると、メンバーによって、直ちに翻訳が開始された。

伸一は、ヨーロッパ会議議長の川崎鋭治らと打ち合わせを行った。彼は言った。

「青年部の第一回代表者大会が行われる今日を、『フランス青年部の日』としてはどうだ

ろうか。それを、川崎さんの方から、皆に諮ってみてください」

この日、パリ会館では、二日目となる友好文化祭や、フランス最高協議会が行われ、午後

五時半、フランス青年部代表者大会が、意気軒昂に開催された。

この席上、川崎が、「六月十四日を『フランス青年部の日』に」という伸一の提案を伝え

ると、賛同の大拍手が沸き起こった。

さらに、フランス男子部のリーダーによって、詩「我が愛する妙法のフランスの青年諸君

に贈る」が読み上げられていった。

皆、伸一の魂の叫びを聴く思いがした。

 

 

 

暁鐘 五十

 詩を読み上げる力強い声が会場に響く。  

フランスの青年たちの瞳が輝き、新しき世紀への旅立ちの決意が燃える。  

「今ここに 

 立ちたる青年の数二百名   

 君達よ   

 フランス広布の第二幕の   

 峰の頂上に立ちて   

 高らかなるかっさいと   

 凱歌をあげるのだ   

 そのめざしゆく指標の日は   

 西暦二〇〇一年六月十四日   

 この日なりと――」  

朗読が終わった。一瞬の静寂のあと、感動と誓いの大拍手が広がった。  

この日、フランスの青年たちの胸に、二〇〇一年という広布と人生の目標が、明確に刻ま

れたのである。  

目標をもつ時、未来の大空に太陽は輝き、美しき希望の虹がかかる。人生に目標があれば

歩みの一足一足に力があふれる。  

山本伸一は、全参加者と共に記念のカメラに納まり、新しい旅立ちを祝し、励ました。  

「まず、二十年後をめざそう。人びとの幸福のため、平和のために、忍耐強く自らを磨き

鍛えて、力をつけるんだよ。自分に負けないことが、すべてに勝つ根本だよ」  ――

「ねばり強さだけが、目標の達成への道なのだ」(注)とは、人生の勝利を飾る要諦を示

した、詩人シラーの箴言である。       

伸一が、パリでも力を注いだのは、信心懇談会であった。特に青年たちとは、折々に語ら

いの場を設け、信心の基本や仏法者の生き方などを語っていった。  

彼は、皆を二十一世紀を担う大人材に育てたかった。だから自身の生命を紡ぎ、捧げる思

いで真剣に語らいを重ねた。  

ある懇談会では、こう訴えた。  

「仏法では、皆が広宣流布を担う尊き“使命の人”であり、地涌の菩薩であると説いている。

その使命を自覚した時、人は最高最大の力を発揮していくことができるんです」

 

 小説『新・人間革命』の引用文献  

 注 『フリードリッヒ・シラー詩集』ヨーヘン・ゴルツ編、インゼル出版社(ドイツ語)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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